命綱
大和田清司 双葉郡楢葉町
ガソリンの残量が不安でいわき市から移動できない。
ガソリンスタンドはどこも開いていないし、国道には乗り捨てられているように見える車がある。
どうしよう。
避難所の人は不安ではないのだろうか、朝からおにぎりを1個だけ食べた記憶がある。東電は避難所の前で炊き出しでもやらないだろうか。本当に困っているのは誰だか分かっているのだろうか。
東電の社員が真っ先に逃げ出しているなら自分たちも逃げなくてはなどと考えていると、兄弟からガソリンが少し補給できそうなので茨城県に逃げようとの電話があり、とにかく走れるところまでと思いスタート。
母親も高齢であり路上の車の中で寝たりすることは極力避けたいと思うが不安である。
国道6号線の大渋滞の中をバイクにガソリン携行缶を積んで来た友人から補給を受けたときは、命が繋がりこれでしばらく安心とは思うがひたすら一日を生きているだけ。必死に生きているだけのこの時は先のことを考えての不安も忘れていた。