無題
M・S
埼玉の義理の兄のところに避難し、最近やっといわき市のアパートを借りることができた。
ところが定年でノンビリ過ごそうかと思っていた矢先に会社からの誘いがあった。埼玉ではそれなりに気を遣いながらも、定年後の楽しみ方をしており、それにつれて働く意識もなくし、それはそれでいいと思っていた。働かないことの罪悪感も薄れて行っていた。
そんな時の会社からの誘いであり、仕事の内容も土木工事等の肉体的に辛いものであり、ずいぶんと悩んだが、結局引き受けることを決意した。同級生で働いているものは、ほんの数人のようだ。たまにみんなと飲むとうらやましがられるものだし、もう少し頑張ってみようと思っている。
だが仕事を終えアパートに一人になると不安になるときもある。子供も成人し不安といえば自分の老後のことだけだが、今は、そんな不安を仕事で紛らしているといえるのかもしれない。