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大震災の前日

鈴内 昌枝  いわき市玉露

 3月10日、母の命日だった。私はその日、仕事が休みだった夫と、遊びに来ていた娘と相馬港の方へドライブに行っていた。海岸線を走っていると、ものすごく白波が立っていて、思わず「お父さん、あれ見て気持ち悪いくらい白波が立っているよ。もしかして、何か起こるんじゃない?」そんな話をしながら、あの大震災の前日、走っていました。時間も、3時半ごろだったと思います。まさか、次の日にあんなこと(大震災、津波)が起きるとは思わずに...

 実は、その日、母の命日だったことを忘れて出かけたのです。夕方、家についてから思い出し、線香をあげてきました。母が亡くなって30年が経ちますが、本当に命日を忘れたのは初めてだったんです。忘れなければ、出かけませんでした。今では、あの素敵な海岸線も見ることができません。母が、私に見せてくれた最後の景色でした。


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