ホーム - 震災かたりべ - 老僕と呼んで下さい

老僕と呼んで下さい

田中 秀男  会津若松市

  三月十一日、楽しい兄弟四人でいわき市四倉の温泉に出かけた。昼食をビールと刺身と芸人の踊りを見て楽しんでおりました。その時に地震が来たのです。職員の指示で旅館の玄関ホールに行くようにと案内されてついて行き、ホールの高台で国道を見ていたところ、走っていた車二台が津波に巻き込まれ流されていくのが見えたその時、旅館の海側の方から高さ十二・三メートルはある高い所のガラスを割り、あの大波が来たのです。

  ホールのテーブルが僕達を玄関の外へ出そうとテーブル、売店の品物、ウィンドウが腰高ほどの大津波で流されて行くなかで、兄弟の手をしっかり取り、玄関の柱につかみながらも二人の姉の手が離れてゆき、やっとの思いで大きな鉢の木につかまり命拾いした。四人は腰を打ちましたが幸いでした。

  夜に海を見て船が流され車が浮いている海を見て、これが平成二十三年の海なのか...。頭が真っ白になり、外国にでも行った夢を見ているようだった。


« 一覧ページに戻る